「僕と君」/ひりゅうとおる

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一緒に生まれて、一緒に育って、いつも隣にいた君
いつでもどこでも、そしてなんでも一緒だけれど
僕が右手でペンを取ると、君は左手でペンを取る
僕が右手で食事をすると、君は左手で食事をする
僕が右側から振り返ると、君は左側から振り返る
正面に座る家族は僕達を見ていつも笑った
まるで真ん中に鏡を置いているようね
そう言われて僕は右から、君は左から目配せして、
そしてそっと微笑み合った
いつも一緒、いつも同じ
でも、動きは正反対

鏡を覗いたら、君がいた
右手で鏡に触れたら、君も左手で触れてきた
でも、僕は僕で、君じゃない
僕と君の間にあった鏡はもうないんだ
いつも一緒、いつも同じ
でも、動きは正反対だったから

君は、もう、いない

 

Auther : ひりゅうとおる
Circle : 宵待ブルー
Twitter : @yoimachiblue
紹介文 : いつもと違う作風で。普段はコメディやほのぼの、恋愛ものなど現代物ばかり書いています。

 

 

 


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コメント

  1. いぐあな より:

    最後の一文にああ……と。
    が神の向こうが君に見えてしまうけど君ではない、切なさが迫ってきます。

  2. 森村直也 より:

    前半の記述がなんとも微笑ましくて、かわいらしくて、
    家族とともに幸せだったのだろう様子が覗えました。

    そこから一転した後半。
    成長したのでしょうか。独り立ちしたのでしょうか。
    家族の気配もなく。
    対比が哀しいほど鮮やかで。
    最後の一文、ハッとしました。

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