初めの一冊/つんた

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

Auther : つんた
Circle : みずひきはえいとのっと
Twitter : @tsuntan2
紹介文 : 時間移民シリーズからの短編です。イングランドで初めて印刷され出版された本はサーマロリー著の「アーサー王の死」だそうです。献呈された王はリチャード三世。
ただ、戦死する三週間前の出来事だったため、彼は完読できたのか、疑問・・・。

 

「これは」

「ああ、これは最初のアーサー王の死という本ですよ」

「印刷、ですか」

「はい、時の王、リチャード三世に献呈されています。それもあの戦いの三週間前に」

「そうだったんですか」

会話を横で聞きながら、少年は待っていた。少年が飲食許可が下りているスペースに移動しようかとしたとき、係員が呼び止めた。

「上がりましたよ」

差し出された本は先ほど展示されていた本と同じものだった。

「ありがとう」

「特別ですよ、三世陛下」

係員の声に先ほどの見物客が振り向いた。笑顔の印象的な少年。

「また読めるなんて思わなかった、兄上とサー・マロリー、それに従兄殿に感謝しなくちゃ」

「よかったですね、陛下」

また笑った。少年は誰、と見物客は思った。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

  1. いぐあな より:

    献呈された本を再び。
    今度はじっくりと時間を掛けて、最後まで読めたと思います。

  2. なな より:

    歴史物は残されていないもう知ることのできないところに想像の翼が広がりますよね。シリーズ物みたいで本編が気になります。

  3. 森村直也 より:

    テキレボアンソロの方でも思いましたが、歴史をやってこなかったことが歯がゆいのです。
    はじめての印刷という但し書きにトキメキます。
    歴史ものもちゃんと学べばもっともっと面白いはずと思う一瞬です。
    そして、時を越えて手にする気持ちは一体どんなものだろうと考えます。

    ……いやでも、「誰」ですね(笑)

いぐあな にコメントする コメントをキャンセル

*