第5回作品集

月餅の葛藤/森村直也

 

 

 

Auther : 森村直也
Circle : HPJ製作工房
Twitter : @hpjhal
紹介文 : 遅刻で参加させて頂きます。

実家には昔から何故か中華菓子が良く落ちていました。
母親が地元の出身で、中華街付近にも知り合いがおり、理由もありだったのでしょう。
(ちなみに最近非常に困ったのは、ソフトキャラメル&ピーナッツクリームのチョコバーです。)
背景と本文とから想像して頂ければ幸いです。

 

 

 

幸福のケーキ/天野はるか

 

 

 

Auther : 天野はるか
Circle : HAPPY TUNE
Twitter : @haruka_sousaku
紹介文 : 可愛らしくて美味しそうなケーキをお洒落で可愛い女の子に例えて書き綴りました。
まるごとバナナでも誰かのお気に入りになれれば幸せです。

 

 

 

焼きまんじゅうと銘仙 その2/つんた

 

 

「これ、あんたにやるよ」

祖母が残した銘仙。

「あたしの母が織ってくれた」

そういつも話していた祖母。曽祖父は機屋をしていた。曾祖母は銘仙を織っていた。

もうその機屋はない。祖母が嫁いで間もなく廃業した。その機屋の最後の銘仙。

それを着て、その街を歩く。住宅街に古い焼きまんじゅう屋があった。祖母が懐かしがった上州のおやつ。

彼女はその店をそっと見ていた。店主は赤い古いうちわを忙しなく動かして炭火でまんじゅうを焼いている。

年老いた店主は祖母よりもいくらか若いのかもしれない。

その店主が顔をあげた。ぎょっとした顔をした。

「ゆうさんかと思ったよ、ゆうさんの銘仙だね、それは」

店主はそう言って笑っていた。

 

Auther : つんた
Circle : みずひきはえいとのっと
Twitter : @ tsuntan2
紹介文 : 銘仙は伊勢崎市の特産品でした。今では織元は一件しかないそうです。焼きまんじゅうは群馬のおやつで、餡なしのすまんじゅうを炭火で焼き、味噌タレをかけたもので、群馬の女性たちはなるべく料理かんたんにして糸繰りや織物に従事したものでした。もう今はない機屋は近所にもあったそうで、そこの亡くなったおばあさんを思い出して書いたものです。別のパターンもありますので、そちらもよろしく。

 

 

 

焼きまんじゅうと銘仙/つんた

 

 

伊勢崎銘仙を着て、その店の前に麻衣はいた。年老いた店主は「あれ、荻野のゆうさんかと思ったよ」と言った。

「それ、祖母の名前です」

「ゆうさんの孫かー、よく似てんなー」

店主は焼まんじゅうを焼きながら笑った。

「ゆうさんもよくじいさんに連れられてここに来てたなー、そんときゃ俺もちびだったけどよ」

「この店、長いんですか」

「俺で五代目」

「祖母は店は田んぼの中にあったと」

「そりゃ、随分昔の話だね」

「そういえば」

古びた店は住宅地の真ん中にあった。

「その銘仙、ゆうさんの形見かい」

「そうなりますね、おじさん、焼きまんじゅう、くださいな」

「あいよ」

香ばしい香り。代々受け継いだという味噌ダレ。素朴な上州のおやつ。

 

Auther : つんた
Circle : みずひきはえいとのっと
Twitter : @tsuntan2
紹介文 : 銘仙は伊勢崎市の特産品でした。今では織元は一件しかないそうです。焼きまんじゅうは群馬のおやつで、餡なしのすまんじゅうを炭火で焼き、味噌タレをかけたもので、群馬の女性たちはなるべく料理かんたんにして糸繰りや織物に従事したものでした。もう今はない機屋は近所にもあったそうで、そこの亡くなったおばあさんを思い出して書いたものです。別のパターンもありますので、そちらもよろしく。

 

 

 

大人のはなし/東見日和

 

  私が知ってる大人は、酒乱の父親と自分の意見を持たない母親、心配はしてみせるけど面倒事は勘弁という顔をする担任教師と、声の大きさに無自覚な噂好きの近所のおばさん。それくらい。

 だから背筋のぴんと伸びた、スーツを着こなすおじいちゃんを見た時には驚いた。それが私と血が繋がっているという。ちょっと信じられない。

「好きなものを頼むといい」

 ジャズの流れる静かな喫茶店で、私はおじいちゃんと向かい合ってケーキを食べた。甘ったるくないモンブラン。サクッとする何かが真ん中に入ってる。

「私達と一緒に暮らすかい?」

 それがメレンゲだと気づいた時、おじいちゃんの頼んだコーヒーが減ってないことにも、初めて気がついた。

 

 

Auther : 東見日和
Circle : complex garden.
Twitter : @Harumi_Niwa

 

 

 

おまじない祈願/東見日和

 

 

  いつも舐めてるのど飴の大袋には、形の違う〝当たり〟が入っていることがある。受験の時期だと合格祈願、バレンタインデーの前ならおまじないの言葉がパッケージを飾るのが、ここ数年のお決まりだ。

 星やハート型の飴を舐めるのがなんとなく気恥ずかしくて、俺は買うとすぐに〝当たり〟があるかを確かめた。それを避けてポケットに突っ込むと、消費されない〝当たり〟が溜まっていく。

『あ、それ美味しいよね』

 教室で常盤に声をかけられた時、驚いて返事もできなかった気がする。机の上に放った〝当たり〟を掴んで、渡しもしないだろうにこっそりポケットに混ぜ込んだ。

 大事なのは、自然な装いとタイミング。もしくは話しかける勇気だけ。

 

Auther : 東見日和
Circle : complex garden.
Twitter : @Harumi_Niwa

 

 

 

商品名・星/sunny_m

 

 

 

Auther : sunny_m
Circle : 白玉
Twitter : @sunny_m_rainy
紹介文 : お星さまを食べてみたいっていう願望は結構小さなころからあった気がします。食いしん坊なのはデフォルトです。
冬の星は洋酒に漬けてアイスクリィムと一緒に食べるときっとおいしい。真冬のアイス~星を添えて~ はきっと禁断の味。
(このお星さまを買った人はどんなお菓子を作るだろう、なんてことを考えるのもまた楽しい)

 

 

 

コイスルオイモ/sunny_m

 

 

 

Auther : sunny_m
Circle : 白玉
Twitter : @sunny_m_rainy
紹介文 : 300字SSポスカラリー企画内企画『ご当地菓子巡り』に【埼玉県】で参加。

「いも恋」
→食べ歩きで買い食いしても楽しいし美味しいんだけど、箱で頂いたりするとちょっとうれしい。
「やたら長い麩菓子」
→麩菓子なので、当然のごとく内側はナチュラルなお麩。外側のところだけが黒糖味です。
「うまい、うますぎる」
→名前を言わなくても、埼玉県民ならばすぐにわかるお饅頭。中学生の頃、クラスの男子がこのCMの真似をよくしていた。