第9回作品集

お針子/寿 ちま

 

 

 

教会には特別なお針子が存在する
眠り姫の衣装を専用に仕立て上げるお針子
少女のままの姿であるためサイズは変わらず
衣装は作れば作るほど年数を越えていく

故にアンティークと呼ばれる物も少なくない
今では手に入らない生地、飾られているレースやビーズなど
それを管理するのも彼らの役目だ
ここで仕立てられた衣装の出来栄えは
最高の技術と賞賛されるが
専用であるために余程のことがない限り以外のことはしない

もう少し飾りをつけましょうよ
このレースなんてどうかしら?

お針子の会話が弾む

女の子は可愛くね
いつでもいつまでも可愛くだわ
姫様を可愛くするのは私達の役目
最近はほら
思い出したように言う

装いは大事だわ
そうね

ふふふふ

 

(画像が小さかったため本文は主催が書き起こしました)

Auther : 寿 ちま
Circle : らいとにんぐにゃんこ
Twitter : @lightningnyanko
紹介文 : 黒の史書第9話です

 

 

 

真白の衣装は甘く儚い/服部匠

 

 

 

Auther : 服部匠
Circle : またまたご冗談を!
Twitter : @tencus
紹介文 : 不思議なお菓子「魔法菓子シリーズ」より。衣装が変わるお菓子と、憧れのお話。※作中の「ムラング・シャンティイ」は「午前三時の音楽」高梨來さんイメージのツイノベより使用

 

 

 

晴れた日に/一福千遥

 

 

 

 

Auther : 一福千遥
Circle : 絲桐謡俗
Twitter : @ichihukuchiharu
紹介文 : 一福千遥と申します。「己をよろこぶもののためにかたちづくる」その裏にある気概や気迫、のようなものを書きたかったのが、この300字SSです。

 

 

 

乙女たちに寄す/一福千遥

 

 

 

 

Auther : 一福千遥
Circle : 絲桐謡俗
Twitter : @ichihukuchiharu
紹介文 : 一福千遥と申します。この日のためのとっておきのおしゃれ、それが歳月ののなかの、あたりまえの特権であればいいなあ、と思いながらこの300字SSを書きました。

 

 

 

ドレス/PAULA0125

 

 

 結婚はとても大切なものだけれども、結婚したからといって、全てのカップルが上手く行くわけではない。個々の幸せのために、別れなければならないのなら、私達はそれを認めるべきなのだ。
 …だからといって、私の初代先生(?)であるヘンリー8世のような再婚は、私もどうかと思う。あの時の為に私が生まれたなんて知った当時は、気が狂うかと思った。
「健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧する時も、妻を愛し続けると誓いますか?」
「健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧する時も、妻を愛し続けると誓いますか?」 それでも私は、女の姿で生まれたのだから、この白いドレスには、願わずにはいられない。
「それでは、誓いのキスをしてください。」
 ―――このキスが、二人が死に別れる時までも続きますように。この二人に、生涯に渡る結婚の秘跡が続きますように。

 

 

Auther : PAULA0125
Circle : いくそす。
Twitter : @H_tousokujin
紹介文 :  キリスト教各宗派擬人化小説と聖書二次創作専門サークルです。
 腐「女」子なら、やっぱりこれを書いておきたいですね!

 

 

 

神の子を装う/PAULA0125

 

 

  正月休暇なんてモノは、私の仕事にはない。それでも年が明けて最初の休日、今日は一日寝ていようと思っていた。正月に何故かうちに、あの方の父君が来ていてしかも泊まっていたのだが、そんな世話は妻に任せる。
 ピンポンピンポン、と、チャイムが鳴って、私は眠りを妨げられた。職業柄、音には敏感なのだ。妻は朝風呂に入っているらしく、出られないようだったので、仕方なく応対した。
「はい、どちらさま?」
 すると、幼い少女の声がした。
「おはようございます。『本当の』聖書の話を聞きたくありませんか?」
「??? すみません、クリスチャンとやらは妻で十分なので。」
「じゃ、パンフ入れときますので、後からでもご連絡下さい。」
 ゴミを入れるな、と思ったが、こんな小さな子を泣かせることもない。私は了承した。

 

 

Auther : PAULA0125
Circle : いくそす。
Twitter : @H_tousokujin
紹介文 :  キリスト教各宗派擬人化小説と聖書二次創作専門サークルです。
 羊の皮を被った狼にはご注意を。引き続き我々も声を挙げていきたいですね。

 

 

 

神を纏う/PAULA0125

 

 

  ―――その男は、私の住んでいるアパートによくやってきた。住んでいるのは殆ど借金漬けで、転居も禄に出来ないような貧乏人ばかり。皆単身者になって心も荒んでいた。
 私がそんなアパートに来たのは、八歳になり、私を引き取った方の親が死んでしまい、行き場がなくなったからだ。私は彼等と会わないよう、いつも時間をずらして帰宅した。
 私と彼が鉢合わせたその日はとても寒かった。私は何も買わずにコンビニにいることも出来ず、駐車場に座り込んだ。
「坊主、これ食っとけ。今日は飯がねえぞ。」
 そう言って、その男は私に肉まんを買って渡してくれた。いつも金色に光っていた手首に、小さな銀色の十字架がついた数珠が巻き付いていた。アレは一体なんだったのか、ずっと不思議だった。
私は信徒になってから、理解した。あの男は、やくざでありながら、神の輩だったのだ。

 

 

Auther : PAULA0125
Circle : いくそす。
Twitter : @H_tousokujin
紹介文 :  キリスト教各宗派擬人化小説と聖書二次創作専門サークルです。
 キリスト教で「着る」と言えばこれが一番一般に馴染みがなくて、かつ重要かなって。