泡沫/六平彩

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 透明な膜が膨らんで、球形を成していく。日光を受けて虹色にうすく輝く、透明で不安定な球体。向こう側と自分の顔が映っていた。横に間延びして変なふうになっている。おかしな顔だ。
 もうひとつ、ぷくっと膨らんだ。ふわふわと浮かぶそれらがどうにもかわいらしくて手を伸ばす。細い音と共に割れて、石けん水をこぼした。
 あの頃に返ったみたいに、自分が幼さを取り戻していくのを感じた。手に持った管を握り締めて、もういちど、息を吹き込む。なかなか離れない。どんどん膨れていく。
 ぱちんと割れた。石けん水の細かいつぶが目に入って少し痛い。ああ、なんだか、幸せだなぁ。

 

 

Auther : 六平彩
Circle : 写翳
Twitter : @yagura0519

 

 

 


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コメント

  1. いぐあな より:

    丁寧な描写にシャボン玉に映る自分に徐々に幼い気持ちにかえっていく姿が浮かびます。
    あの頃のように無心に、ただ無心に遊ぶ時間。本当に素敵ですね。

  2. 森村直也 より:

    読んでいて時がゆっくりになったように感じました。
    そんな時間が無限に合ったかのようなあの頃。
    ほんの少しだけ、そんな時間を取り戻したような今。
    痛みを感じるのは、その時間が確かにある証拠なのかも知れません。
    表面の映る顔。ちょっと間抜けなそれと、キラキラした時間がなんとも素敵です。

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