糸桜/風城国子智

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 川沿いに並んで揺れる、柳に似た、しかし枝の色は確かに緑ではない樹木の写真に、思考が止まる。
「『枝垂れ桜』だな」
 固まってしまったセツナの手から写真を抜き取った叔父の笑いに、セツナはもう一度、叔父の手に渡った桜色をまじまじと見つめた。
「村の古老は『糸桜』と呼んでいたな」
 春になると、叔父は桜を撮りにあちこちに出かける。それが、セツナを引き取ってくれた叔父の、趣味の一つ。
「また、撮りに行くか」
 粉雪が舞う硝子窓の向こうに視線を移し、叔父が頷く。
「付いて来るか?」
「ん」
 色の所為か、桜はあまり好きではない。でも、叔父と、一緒なら。まだ叔父の手の中にある、風に揺れる細い枝の写真を見上げ、セツナは小さく頷いた。

 

 

Auther : 風城国子智
Circle : WindingWind
Twitter : @sxisato
紹介文 : 現代を舞台にした友情物語「桜花火」番外編です。

 

 

 


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コメント

  1. いぐあな より:

    好きではなくても、好きな叔父さんとなら見に行きたいんですね。
    粉雪と『糸桜』が重なって、セツナくんのちょっと複雑な心境が伺えます。

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