揺れる草影に隠れていた物体を、そっと拾い上げる。 小さな手の中に収まる、滑らかで丸い物体。熱が無いから生物ではない。いや、透明な面の向こうに見える三種類の細いものは規則正しく動いている。耳を近付けると、胸の鼓動に似た音がする。きっと凍えているのだろう。アキは一人頷くと、その物体を胸元に入れようとした。 その時。 「あ、あった!」 高い声と共に、手の中の生物が消える。 アキの手の中にあったはずの生物を手にした、背の高い影は、声だけを残して虚空へと消えた。 あの生物は、あの人が大切にしていたもの。それだけを、何とか理解する。大切な人の手の中に戻った。それで良いではないか。過ぎった寂しさに、アキは小さく頷いた。 |
Auther : 風城国子智 Circle : WindingWind Twitter : @sxisato 紹介文 : 普段はファンタジーっぽい物語を中心に書いております。今回は、……ファンタジー? SF? |
全く別の時間、もしかしたら別の世界の人と物の一瞬の遭遇が面白いです。