「私、グロスター公爵夫人になりたいの」 幼児の頃から繰り返した言葉を十四歳になっても、繰り返す。 「それは出来ないんだよ、アン」 「いやよ、私、グロスター公爵夫人になるの」 彼女は王太子妃に納得はしなかった。魂になって父は聞く。 「私、グロスター公爵夫人になったのよ」
気づくと、それは夢。横の時計を見て、彼は微笑んだ。時は巡って、娘はもう願いを叶えていた。 「お父様、いつまで寝ているの、業者の人が来たわよ」 力強い声。もうここにはグロスター公爵という地位はない。けれど、娘は其の地位を持っていた男の妻だ。 「アン」 「なあに」 「幸せか」 「もちろんよ」 時計を見る。遠い時の向こうの夢はもう見ない。
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Auther : つんた Circle : みずひきはえいとのっと Twitter : @tsuntan2 紹介文 : 泡盛さんシリーズの父と娘。政略結婚に翻弄された娘と父のワンシーンです。 |
遠い時の流れの後、望む相手と結ばれ幸せな娘を思う父の気持ちがなんとも優しいです。
親子で幸せでありますように。