腹時計/PAULA0125

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 腹が減った。
だが本当の空腹を、私達は見た。
私達は今空腹だけれども、この上なく大きく美味しいパンを頂いているではないか。家族がいないというこの人から。

「神父様、今日は何だか、なんとなくとても豊かな匂いが致しますね。まるで美術館」
「マリア様を讃える歌を歌ったからでしょう」

その笑顔に、微笑むことしか出来なかった。

「天国に行くときには、腹時計は動き出してくれやすかねえ。
一週間を過ぎた頃から、壊れちまったけど、やっぱり寂しいねえ。」
「最後の腹時計が壊れてから、何日経ったことでしょうね。
…お腹の時計だけは、最期まで動くと思っていましたよ。さて、さいごの祈りをしにいきますか。」

もう鳴らない腹時計。
ああでもその死顔の、なんと満ち足りた事。 

 

Auther : PAULA0125
Circle : いくそす。
Twitter : @H_tousokujin(助手:骨林頭足人)
紹介文 :  キリスト教各宗派擬人化小説と聖書二次創作専門サークルです。
 アウシュビッツの聖人コルベ神父。俄に聖堂となった餓死室が、再び死の部屋になる時。
※無配三種の内の一つ。残り7篇は、ポストカードコンプリートセットにて販売しております。

 

 

 


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コメント

  1. いぐあな より:

    コルベ神父でググったら……。
    アウシュビッツでの悲劇。
    身代わりになった彼は最後の最後のまで聖職者だったのですね。

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