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第6回作品集

第6回作品集

腹時計/PAULA0125

 

 

 

 腹が減った。
だが本当の空腹を、私達は見た。
私達は今空腹だけれども、この上なく大きく美味しいパンを頂いているではないか。家族がいないというこの人から。

「神父様、今日は何だか、なんとなくとても豊かな匂いが致しますね。まるで美術館」
「マリア様を讃える歌を歌ったからでしょう」

その笑顔に、微笑むことしか出来なかった。

「天国に行くときには、腹時計は動き出してくれやすかねえ。
一週間を過ぎた頃から、壊れちまったけど、やっぱり寂しいねえ。」
「最後の腹時計が壊れてから、何日経ったことでしょうね。
…お腹の時計だけは、最期まで動くと思っていましたよ。さて、さいごの祈りをしにいきますか。」

もう鳴らない腹時計。
ああでもその死顔の、なんと満ち足りた事。 

 

Auther : PAULA0125
Circle : いくそす。
Twitter : @H_tousokujin(助手:骨林頭足人)
紹介文 :  キリスト教各宗派擬人化小説と聖書二次創作専門サークルです。
 アウシュビッツの聖人コルベ神父。俄に聖堂となった餓死室が、再び死の部屋になる時。
※無配三種の内の一つ。残り7篇は、ポストカードコンプリートセットにて販売しております。

 

 

 

鐘時計/PAULA0125

 

 

 

 

 教会の鐘の音は、祈りの音。
 平原を駆けぬけていく音が、人々の祈りを吸い、重く大きくなりながら空を高く高く昇って行く。

 感謝と賛美と懺悔と、それから少しの願い。

 軽々と鉄の翼を持って、舞い上がる。

「こら! いつまで鳴らしてる!
 早い所ミサに出なさい、
 今日はあの方の兄上殿と、
 合同でやるミサだ。早く来い!」

 鳴れ鳴れ、鐘の音。香のように昇って行け。
 日に三度、祈りの時を告げる信仰の鐘よ。
 我等の脆き賛歌を神へ届けせしめたまえ。

 そうすれば私たちは、ぼくたちは、
 鐘の音が空へ昇り続ける限り、
 祈りの時を刻むその音を聞きながら、
 教会に来る暇も余裕もない、
 貧しく乏しい日々ですら、
 貴方を想いて、生きていけましょう。 

 

Auther : PAULA0125
Circle : いくそす。
Twitter : @H_tousokujin (助手:骨林頭足人)
紹介文 :  当サークル「いくそす。」は、キリスト教各宗派擬人化小説と聖書二次創作専門サークルです。
 お茶の水にあるニコライ堂の鐘って素敵。尚当サークルでは、兄が西方、弟が東方。
※無配三種の内の一つ。残り7篇は、ポストカードコンプリートセットにて販売しております。

 

 

 

だから時計が壊れたら/森村直也

 

 

 

 朝ですよ。昼ですよ。夜ですよ。
 時計は時を教えてくれます。
 春ですよ。夏ですよ。秋になります。冬ですね。
 時計は季節を動かします。
 雲が動いていきますよ。風が渡っていきますね。潮が大きくうねります。
 時計は世界を見つめます。

 ちくたくちくたく。
 規則正しく時を刻み。
 ちくたくちくたク。
 世界は正しく回ります。
 チくたクちクタKu。
 だから時計が壊れたら。

 花は水の中に咲き。魚は空へと舞い上がり。
 海の中に雨が降り。空を鉱石が流れていきます。
 春の後に秋が来て。夏と冬は一緒にお散歩。
 朝は寝ぼけて、慌てて夕へと交代です。

 だって時計がないのだもの。
 当たり前などないのだもの。

 イルカは花の匂いをかぎます。
 知らない香りを胸いっぱい。 

 

Auther : 森村直也
Circle : HPJ製作工房
Twitter : @hpjhal

 

 

 

お祖父ちゃんの古時計/橋本野菊

 

 

 

 

Auther : 橋本野菊
Circle : アテナ戦記
Twitter : @nogiku42
紹介文 : 喪失と再生が当サークルのテーマです。
伯母が「出費が痛い」とこぼしつつ新たな家電を買い、祖父と祖母を亡くした本家の新しい生活が始まるのでしょうね。

 

 

 

時のブロマイド/ヒビキケイ

 

 

 

 

Auther : ヒビキケイ
Circle : シュガーリィ珈琲
Twitter : @KeiMbsp
紹介文 : 現代ファンタジーと恋愛を中心にコメディも脚本も書くサークル。300字はいつもはコメディタッチで作りますが、今回はほんのり現代ファンタジー×多感な青春風にしました。

 

 

 

時計職人の朝/亀屋たむ

 

 

 

 

Auther : 亀屋たむ
Circle : たむや
Twitter : @kameya_tamu
紹介文 : 異世界の小説を書いています。若者がちょっと成長したり、仕事を押し付けられたりして、人生にソフトタッチで揉まれる話が多いです。作風は軽すぎず重すぎずハッピーエンド。ドラマチックで壮大な話よりも日常的なちょっとした悲しみや幸せを書いています。

 

 

 

残留思念/僅かな希望/真北理奈

 

 

 

 

 

Auther : 真北理奈
Circle : ロザリアは笑う
Twitter : @Rina_sousaku
紹介文 : 長編小説「緋の剣士に捧ぐ交響曲」第二番
~Revenger? Messiah?~前奏のお話。

第二番は下記から。
http://ncode.syosetu.com/n9581eb/

先に第一番をザッと目を通すと少し話の内容が分かりやすくなります。下記からどうぞ。
http://ncode.syosetu.com/n1631m/

2019年に本編製本化し、テキレボに直参する夢だけ抱いております。
特殊装丁でやって来るのでのんびり楽しんで下さい。

ジャンルはファンタジー

 

 

 

時の流れ/つんた

 

「私、グロスター公爵夫人になりたいの」

幼児の頃から繰り返した言葉を十四歳になっても、繰り返す。

「それは出来ないんだよ、アン」

「いやよ、私、グロスター公爵夫人になるの」

彼女は王太子妃に納得はしなかった。魂になって父は聞く。

「私、グロスター公爵夫人になったのよ」

 

気づくと、それは夢。横の時計を見て、彼は微笑んだ。時は巡って、娘はもう願いを叶えていた。

「お父様、いつまで寝ているの、業者の人が来たわよ」

力強い声。もうここにはグロスター公爵という地位はない。けれど、娘は其の地位を持っていた男の妻だ。

「アン」

「なあに」

「幸せか」

「もちろんよ」

時計を見る。遠い時の向こうの夢はもう見ない。

 

 

 

Auther : つんた
Circle : みずひきはえいとのっと
Twitter : @tsuntan2
紹介文 : 泡盛さんシリーズの父と娘。政略結婚に翻弄された娘と父のワンシーンです。

 

 

 

孤独な狩人/濱澤更紗

 

 

 

 

Auther : 濱澤更紗
Circle : R.B.SELECTION
Twitter : @koumyonakakureg
紹介文 : 「古都金澤・喫茶ないと」番外編で、三鷹くんの独白です。テキレボアンソロ「嘘」の「詐病症候群」を踏まえたほうがわかりやすいかもしれません。そして、古都金澤・喫茶ないと本編がどうなるかはこの設定を踏まえた上で以後進んでいきます(そろそろちゃんとまとめろという話が出ているのでそのうちなんとかします)。